エピソード.1:スーパーあかね

私たちのふる里に、 蛍がよみがえった。 稲葉はつみさん(島根県出雲市)

 稲葉はつみさんは、島根県出雲市でIBE販売店「いなばサロン」を営まれています。稲葉さんは23歳で結婚。ご主人の転勤で全国各地を転々とした後、生まれ故郷である島根県に戻ってきたのは37歳の時でした。

 「ふる里の風景が消えはじめている」。懐かしい景色をながめながら、稲葉さんはそう思ったそうです。自分が子どもの頃は、豊かな山があり、美しい川が流れ、緑の田園風景が広がり、夏が近づくと、家の周りは蛍でいっぱいになった。でも、今は……。
「このままでは、子どもたちに残してやるものがなくなってしまう。
“ここが自分のふる里だ"と思えるような風景を子どもたちに残してあげたい」。

『あかね』で川の浄化を。 赤水が透明な水に変わる。そして蛍が戻ってきた。

 稲葉さんが始めたのが『土壌改質材・スーパーあかね』の設置でした。自宅近くの小さな川にあかねを設置してみる。何年かすると、赤味を帯びていた川の色が透明になり、蛍の餌となるカワニナが少しずつ繁殖し始めるようになったのです。稲葉さんは、近所の人たちにも声を掛け、協力しあいながら、川から川へとあかねを設置していきます。島根に戻ってきた頃は、数匹しか見られなかった蛍が、年を重ねるごとに50匹、100匹、300匹と増えていく。初夏のある日、散歩をしている途中で蛍の大群を見かけた息子は、満面の笑顔でこう言ってくれたそうです。「母ちゃん、すごい!」。

 地域の人から「蛍をよみがえらせてくれて、ありがとう」と感謝されるのが嬉しいと話す稲葉さん。稲葉さんが残したかったふる里の風景は、可憐な蛍のともしびを通して、子や孫へと受け継がれていくはずです。

「おーい!」と声を掛けると、多くの蛍が集まってくる。稲葉さんが子どもの頃に見つめていたふる里の風景が見事によみがえった。「今度は、島根県全体、日本全体にこの活動を広めていきたい」と稲葉さん。
稲葉さんが暮らす地域では、スーパーあかねを使用する農家も増えてきている。JAで食味値の検査をしたところ、通常の米は食味値80程度が最高だったが、あかねを使用して作った米の食味値は86だったという。
島根県の代表的な景勝地「宍道湖」は、地域に暮らす人たちの生活を大きく支える。稲葉さんは言う。「川をきれいに保つということは、この宍道湖を美しく保つということ。貴重な自然を後世にまで残したい」。
写真左が稲葉さん。地域の自然をよみがえらせるために、地道な活動を続けてきた。今では稲葉さんの活動に参加する地域の人たちも増え、その輪はさらに広がっていこうとしている。
※取材した方のお話に基づき、原稿を構成しています。
私とπウォーター